読書メモ:ヒット・リフレッシュ(サティア・ナデラ)
Hit Refresh(ヒット リフレッシュ) マイクロソフト再興とテクノロジーの未来
- 作者: サティア・ナデラ,グレッグ・ショー、ジル・トレイシー・ニコルズ,ビル・ゲイツ
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2017/11/16
- メディア: 単行本
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目次
概要/メモ
マイクロソフトの劇的なターンアラウンドを成し遂げたCEOナデラの本。
経営者本にありがちな、自慢話や苦労譚が、一切ない。
「協調」と「社会的責任」を重んじるナデラが、未来のために考えていることを投げかける本。
・AI/複合現実/量子コンピューティングは、新たな産業革命を起こす
・働き方・生き方・学び方が、変わる。社会が変わる
・テック・グローバル企業は、社会変革を起こしていることに自覚的になるべき
・つまり、きたる社会変革が「フェアで、全体のパイを大きくする」ものになるように(フリーライダーや金儲けではなく)システム創造の責任者として舵をとるべき
・そのために、マイクロソフトもナデラも、聞く耳を持ち、積極的に議論を行い、成長し、自制的になる必要がある
マチュアな哲学だと思ったし、
ナデラとマイクロソフトが好きになった。
本書の内容
・(1) ナデラの半生
ー 第1章: インドの学生時代、価値観の形成
ー 第2章: マイクロソフトでの修行時代
・(2) マイクロソフトのターンアラウンド
ー 第3章: CEO就任
ー 第4章: 企業文化を変えるための取り組み
ー 第5章: 他企業とのコラボレーション
・(3) テクノロジーの未来と、グローバル企業の「あるべき姿」
ー 第6章: 世界を変える3つの技術(AI/MR/量子コンピューティング)
ー 第7章: 社会変革の論点①: プライバシー/言論の自由と、国家の警察権(≒ テロと犯罪の抑止)のバランスを如何にとるか?
ー 第8章: 社会変革の論点②: AIの未来。人間とAIは、どう付き合うべきか?
ー 第9章: 社会変革の論点③: テクノロジーの進化を、経済成長(世界の幸福量アップ)に結びつけるために考えるべきことは?
感じたこと
マイクロソフトがターンアラウンド出来た理由
・ナデラの感性(1): UXの現代的なセンス。クラウド・モバイルファーストなユーザー体験といった未来は、ビル・ゲイツにも、スティーブ・バルマーにも見えなくなっていた。だが、検索エンジンのBingや、クラウド事業を手がけていたナデラには明確に見えていた。
・ナデラの感性(2): 協調と謙虚と社会的責任感を旨とする、高い倫理観。彼が、いち職業人として目指していること、企業の一員としてありたいと思う姿、歴史のなかで企業として果たしたい役目、この3つのレイヤー全てで、とても謙虚。だから、受け入れられている。
・ナデラへの劇的なリーダーシップ交代劇: マイクロソフトの劇的なターンアラウンドに伴った痛みは、本書では、ささやかにしか触れられていない。以前読んだ、元マイクロソフト日本社長の樋口さんの本の方が、生生しく描かれていたと記憶。以下はそのメモ。
- トップ自身が変革の阻害要因だと、ゲイツ/バルマーは自ら悟り、2013年サティア・ナデラに権限移譲。その後、バルマーは、1日も出社しなかった
- ナデラは、1週間で役員を切替え、これまでの vs. Apple/Google戦略ではなく、
Apple/Googleに、”端末単位では軍門に下り”、”クラウドでは勝つ”という方向に大きく舵を切った -
参考
僕が「プロ経営者」になれた理由--変革のリーダーは「情熱×戦略」
- 作者: 樋口泰行
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2017/01/27
- メディア: Kindle版
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・企業文化への徹底したコダワリ
ー 役員合宿 → 涙を流しながら価値観共有
ナデラの人間形成
・人生に意義を見出すことを重要視した母親
ー「好きなことを好きなペースでやる、よこしまな目的に左右されず、心を込めてしっかりとやる。そうすれば、人生に失敗することはない」
・ハイデラバードパブリックスクールは、グローバルIT社長をたくさん排出
ー アドビのCEOは、友達
・クリケットのチームプレー
・仏教の価値観
・超エリートではなかった(IITへの受験失敗)
・人種の壁があったマイクロソフトで、冷静に、働く情熱を育てた
ー 90年代まではVPにはなれないと言われていた(!)
ー "人が何かを創造し挑戦することを手助けしたい"
・障害を持った子供を2人授かる
・ナデラですら、分からない+読み過ぎは危険だと思っている
・正しい態度は、「試行回数を増やす・失敗に慣れる・撤退に上手くなる」
・MSは3つの時間軸で事業を捉えている
ー 四半期に1回の、UX向上
ー 近い将来のプラットフォーム変更
・音声IF/アシスタント機能/工場・車・家庭のあらゆるIoT化
ー イノベーションの最前線のR&D
・MR、AI、量子コンピュータ
ー 複合現実: 医療、教育、製造
ー 人工知能: 予測。ジカ熱などの流行。リソースの最適配分
AI進化の行く末
・アルゴリズムを、カスタマイズする企業は、ごく一部に限られてくる
・汎用アルゴリズムを、みんなが使う世界へ(=MSの志向する先)
ーMSの例)McDonald: ドライブスルー支援、ウーバー: ドライバーの写真と顔を照合、ボルボ: ドライバーの注意散漫を啓発
・MSRの研究内容は、どれもエキサイティング
・倫理との境目
ーStanfordの100年研究が先行
量子コンピューティング
・ビットではなく、キュービトという量子学的存在にて、計算する
・AIが、認知(=人間レベルの自然言語理解)に至るには、量子コンピューターが必要かもしれない
・莫大な計算量が求められる例)HIVのワクチン
ー HIVのワクチン開発にあと10年かかると言われている理由は、HIVの蛋白膜が極めて変化しやすいから
・量子コンピュータのハードルは、3つ
-(1) 数学:位相キュービット
ー(2) 超電導工学: 安定した位相キュービットを作る方法の確立
・量子コンピューターの最大の敵はノイズ。宇宙線、稲妻、携帯電話による電磁波
ー(3) CS: 量子コンピュータのためのプログラミング方法の確立
・量子コンピューターは、非常に繊細なので、普通のパソコンに載るようなものではない。クラウドで繋がり、普通のPCを補助する存在になる
ナショナルセキュリティと、プライバシーのせめぎ合い
・セキュリティと、プライバシーのせめぎあいは、米国での議論を眺めるほかない
・日本では、リアリティの沸かない抽象的な議論に終止しているが
・米国では、すぐそこにある、本当に危機的な論点なんだということがわかった
また、不当な検挙や、摘発は、アメリカにとっては、革命の原動力になってきた
・修正第4条 by ジョン・アダムズ
ー イギリスによる不当な逮捕やガサ入れが問題視されていた
ー というか、なれない
・だから政府関係者は、シリコンバレーの企業誘致ばかり考えるのを辞めろ
・自国にとって最適な「取り入れ方」を検討しろ
・産業革命のコア技術は全てイギリスで生まれたが、それで成長したのは、他の国だった
ー ベルギー:積極的に技術を取り入れ自国産業を大きく伸ばせた
ー スペイン:遅れた
Hit Refresh(ヒット リフレッシュ) マイクロソフト再興とテクノロジーの未来
- 作者: サティア・ナデラ,グレッグ・ショー、ジル・トレイシー・ニコルズ,ビル・ゲイツ
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2017/11/16
- メディア: 単行本
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